金曜日の夜をめざして

うつ病とかいろいろ

自分がうつになった理由を覚えていますか

わたしはよく覚えていません。

気づいたらうつと診断されて、自分の心と体がぼろぼろになっていたことを告げられました。

「あなたはおかしくなっている」

お医者さんにはそうはっきり言われました。

自分ではおかしくなっているつもりなんかなかったのですが、医学的な診断でははっきりと「うつ病」に該当しているようでした。

自分がうつ病になるわけがないと思っていた

わたしはメンタルが強いほうだと思っていました。

ストレス耐性が強く、心を病むことはないと思っていました。

多少つらいことがあっても寝たら忘れるタイプだと思っていました。

 

だからうつ病なんて遠い世界の話だと思っていました。

うつ病なんて病気が本当にあるんだ、と、その存在を少し疑っていたくらいでした。

 

だって、わたしがうつ病になるなんて想像もつかなかったから。

仕事と私生活の忙しさで押しつぶされそうになった時期があっても、なんとかなると思っていました。

なんとかしなければならないと思っていました。

まだ若いし、多少むりをしても大丈夫だろう、と自分を過信していました。

 

その期待は裏切られました。ある日からわたしの体は動かなくなりました。

家から出られない

休みの日でも外出できなくなりました。

それまでのわたしは外出好きで、しょっちゅう買い物や小旅行に出かけていました。

家の外に出ない休日なんてありえない、と思っていました。

 

あるときから、朝目が覚めても、体が動かせなくなっていました。

体中が痛い。頭が痛い。全身が強い重力で押さえつけられたみたいに重い。

 

休日の予定をすべてキャンセルして寝込みました。

このときは風邪でもひいたかなと思っていました。

だから眠れば体力が回復して、元気になると信じていました。

 

頭が悪くなった

端的に言うと、頭が悪くなりました。

会議に出ていても、誰かの発言内容が理解できない。

誰かの発言に対して誰かが返答しますよね。それも理解できない。

だから今、何の話をしているのか。結論がどこに向かっているのか、理解できない。

 

少し前まではついていけたスピードのことが、どんどん処理できなくなっている。

あれ、おかしいな、って思いました。

 

同僚から仕事の件で話しかけられても「ごめん、今のってどういう意味?」と聞き返すことが増えました。

別に同僚をあおっているわけでもなんでもなく、相手の言っていることが本気で理解できないのです。

誰かの言葉が耳をすり抜けていくだけ。

脳みそが言葉を処理していないのを感じました。

 

普段は書ける漢字が書けなくなって戸惑うこともありました。

もっと戸惑うのは、スマホを開いて書けない文字を検索する、という「発想」すらなくなったことです。

「あ。『嗜む』って漢字が書けない。…………………あ、そうか、検索すればいいのか」

この「……」が、普通の人なら1秒もかからないでしょう。当時のわたしはリアルに1分以上かかっていました。「書けない」から先に思考が進まないのです。

 

いわゆる「頭を使う」「「頭を切り替える」「ひらめく」そういったたぐいのことが一切できなくなりました。

 

受動的な、何も頭を使わなくてもいいルーチンワークだけは、ひたすら機械のようにやっていました。

しかし突然の工程変更や、会議の開催などが起きると、事態の変化についていけなくなり、パニック状態になりました。

 

このころ初めて、「自分の調子は少しおかしい」と感じるようになりました。

 

自分が書いた文字が理解できない

仕事のためにToDoリストを作成し、使用していました。

いわゆるタスク管理ですね。

わたしは朝一でリストを作成し、リスト上のスケジュール通りに仕事を進める、というスタイルを取っていました。

 

あるタスクが終わり、次のタスクを確認するために、ToDoリストのエクセルファイルを開きました。

 

「…………」

 

自分が打ち込んだ文字の内容が理解できない。

目には映っているのです。ただしその中身が理解できない。

「A社にメール」という内容が、普通の人なら、1秒で理解できるでしょう。

わたしはその画面を見たまま1分以上固まっていました。

 

「A社…A社…A社…メール…メール…メール…(以下、繰り返し)ああ、わたしがA社にメールを送ればいいのか」

 

とにかく、物事を認識して次にすべきことを割り出す能力が極端に低下していました。

何をするにしても通常の倍以上時間がかかるので、もちろん生産性は落ちます。

残業時間も伸びます。通常より明らかに動きが遅くなっているので、ふつうなら定時で終わらせられる仕事でも、余裕で深夜におよびました。

 

この時点で病院に行けばよかったのですが、わたしはなぜか自分に鞭を打ちます。

「わたしの努力が足りないせいで生産性が落ちているのだ。チームの足を引っ張らないようにしなければ。もっとやる気を出さなければ。わたしのような能力の低い人間は人の10倍努力しなければ」

 

…そうやって自分で自分を追い詰める方向に進んでいきます。その結果、心身の状態悪化が、より顕著になっていきます。

 

血尿、血を吐く

生理でもないのにトイレで真っ赤な血が出るようになりました。

咳が止まらず、ごほごほ言っていたらマスクが赤く染まってしまいました。

 

免疫機能が相当落ちていたのでしょうか。

このころになるともう、どれだけ長時間寝ても、疲れが取れず、頭はつねに1トンの鉛を載せられているような重みがつきまとっていました。

 

服装にも気を遣わず、食事にも興味がなくなりました。趣味も手につかなくなり、テレビを見ていても何も思わなくなりました(というより、テレビで流れている内容が理解できなくなった)

 

完全に脳みそのバグです。同僚からは「様子がおかしい」と言われるようになりました。結局、「このままだと死ぬんじゃないか」という危機感にようやく気付いて、訪れた先の心療内科「うつ」と診断され、治療を始めることになりました。

 

長時間労働、人間関係

自分がうつになった理由ですが、おそらく長時間労働と、劣悪な人間関係です。

この2つが私の脳みそをぽんこつにした原因だと思います。

仕事以外のことを何も考えられなくさせられてしまった。

生きる喜びのすべてを奪われてしまった。

 

当時、わたしは「平日は仕事に全力投球、土日は趣味」という「メリハリ」型のライフスタイルが健康的だと思っていました。

つまり、平日は仕事以外何もしなかったのです。趣味やプライベートな時間のすべては土日にまわしていました。

 

その結果、平日のわたしの脳みそは100パーセント仕事になりました。

それはいつしか土日も浸食していき、趣味を楽しむはずだった休日もまともに過ごせないレベルになってしまいました。

 

うつになった原因を挙げるとすれば「仕事以外の居場所を確保しようとしなかった」ことでしょう。

仕事のことだけ考え続けた結果、わたしはうつになりました。

同じように仕事人間になっている方、要注意です。

わたしは自分がうつになるわけないって思っていたのに、気づいたら何種類も薬を飲まないと仕事できないようなからだになってしまいました。

 

自分はうつにならない、なんて思ったら、大間違いです。